るり農園のこと第二話 種取りの伝統とお客さんとのつながり

その日はこの原稿のためにいつもに増してお話をゆっくり伺わねばなりません。けれどインタビューが始まっても光治さんはじっと座っていません。こちらの質問に大きな声で答えながら、あちこちの袋を開け、黒豆や小豆やらを取り出して見せてくださり、それから裏の水場で種取り用のトマトを見せてくださり、これも種取り用のカサカサになったインゲンを見せてくださいます。

光治さんは代々種取りが当たり前だとおっしゃいます。ご自分の畑で取れた種は、また次の年も良く育つし、そうでないとご自分の作物の味にならないのだそうです。新しいものを作る時には種を買われますが、ご自分の納得いく味になるまで何年か畑に馴染ませるのだそう。

「そのやり方でお商売的にはどうですか?」と伺うと、実に明るくキッパリと「駄目でした!」とのお返事。思わず笑ってしまったのでした。
「儲けよと思たら、規格を揃えてダーっと同じもんこさえたら、そらその方がええけどな、それでは面白ないねん。『おいしいなあ』と思てくれる人がこうして買いに来てくれるやろ。ほんで顔見て話して。それが僕の商売やねん。小豆売ったら、次来てくれる時に饅頭こしらえて持ってきてくれたりするやろ。ほんなら、もうそれが嬉しいねん。自分の作ったものをお客さんが手を加えて、おいしくしてくれるのが見えるやろ。それで元気をいただくねん」